その昔、中世ヨーロッパにて。
ハンカチが多様化し、男性の持ちものから女性も持つものへと変化しはじめたころ。
ハンカチは、婚約の証として贈られる、神聖な意味を持つものでした。
装飾性の高い、レースや刺繍が加えられた豪華なハンカチは、今でいう婚約指輪のようなものでしょうか。

ただそれは、ただロマンチックなだけではありません。
当時は、戦争があちこちで起こっていた時期でもあります。
恋人が戦に出かけてしまい、そのまま帰ってこない、ということもあったでしょう。
だからこそ、こんなエピソードがたくさん残っているといいます。
―戦に出かけていく騎士に、自分のイニシャル入りのハンカチを贈る。
「私のかわりにそばにおいて」という切ない想いを込めて。
いつも、肌身離さず身に着けていて、
色んな一日に寄り添ってくれているハンカチは、
いわば自分の分身のようなものです。
だからこそ、自分のイニシャル入りのハンカチは、
深い愛情のしるしになったのかもしれません。
いま、ハンカチにイニシャルを入れることは、
もっとカジュアルなものとして広まっています。
新たな決意を忘れないために、自分の名前を入れたり。
大切なあの人の名前を入れて、世界にひとつだけの贈りものにしたり。
それは、ものや人に対する、
「大切にしたい」という想いを形にするため、ではないでしょうか。
その1、2文字は、自分の名前であっても相手の名前であっても、
あるいは何かのメッセージだったとしても、
大切にしたい何かの、文字通り「形見」なのです。
ハンカチに、イニシャルを入れること。
その気持ちは、今も昔も変わらない。
カジュアルな形見、というと大げさかもしれませんが、
いつものあの人に、いつもよりちょっと深い気持ちをこめて、
イニシャルを入れたハンカチを贈ってみるのもいいかもしれません。
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